家づくりをご相談いただいた際、敷地の条件や日々の暮らし方をじっくり伺ったあと、いつも自分自身に問いかけることがあります。
「もし自分がこのご家族と同じ条件だったら、ここでどんな暮らしを楽しみたいだろう」
延岡市「無鹿の家」の計画では、敷地の西側に奥様のご実家が隣接しており、お子様たちも日常的におじいちゃん・おばあちゃんの家を行き来して過ごすという、とても温かな環境がありました。
この敷地とご家族ならではの日常を素直に受け止め、無理なく自然に寄り添える住まいの形を考えていきました。
通り抜けるテラスと、広がる回遊動線

南側の道路からアプローチを進むと、玄関ポーチを兼ねた屋根付きの深いテラスが現れます。
このテラスはただの玄関先ではなく、そのまま西側のご実家へと通り抜けられる設計にしました。雨の日でも濡れずに往来でき、夏には子どもたちのプール遊びや家族でのバーベキューを気兼ねなく楽しめる半屋外の居場所です。

室内への入り口も一つではありません。
- 南アプローチ → テラス → 玄関 → LDK
- テラス → 薪ストーブのあるヌック → LDK
- LDK → 玄関・東の庭・西のご実家へ
外と内がぐるりと回遊できる動線をつくることで、子どもたちが元気に駆け回り、ご実家との距離を自然に縮めてくれます。
薪ストーブと造作ソファが迎える「土間ヌック」

LDKの片隅には、一段床を下げた土間仕上げの「ヌック」を設けました。
黒い薪ストーブの傍らにぴたりと納めたからし色の造作ソファ。テラスの大きな木製開口部から外の緑を眺めながら、冬には薪の爆ぜる音と柔らかな暖かさに包まれて静かに本を読んだり、家族とお茶を飲んだりできる心地よい籠もり感をつくっています。
つながりとプライバシーを両立する配置計画

ご実家との距離が近いからこそ、お互いのプライバシーへの配慮も大切な設計のテーマでした。
無鹿の家とご実家の「LDK」や「デッキスペース」は視線や気配が優しく通い合うように位置を揃え、家族の気配を感じられる安心感を確保。その一方で、寝室などの落ち着いて過ごしたいプライベートな居室は互いの視線から外れる位置へとずらして配置しました。
近すぎず、遠すぎず。お互いが気兼ねなく、心地よい距離感で寄り添い合える関係性を間取りで支えています。
敷地が持つ個性やご家族の暮らしぶりに素直に耳を傾け、そこで営まれる日々の風景を丁寧に描いていくこと。
住まい手のこれからの時間を思い描きながら図面を引く、設計の楽しさをあらためて実感した住まいです。

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